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働く人の立場の違いと必要な学び


小売りや飲食店を中心に、社員を最小として、パート社員や派遣社員という形で店舗人員を構成する運営が多くの企業で行われています。固定費の削減や、効率的な運営、その他さまざまな意図をもって企業は判断しています。もちろんプラスの効果を期待して行われていますが、実際にはマイナスの面も多くあるようです。

この立場の違いというものは、それぞれの中で、大きな影響力を持ちます。まずは序列。社員は少なくとも、パートさんや派遣さんに指示を与える立場であるわけです。ところが、実際には必ずしもそうはいかず、社員さんよりパートさんや派遣さんの経験値が高く、社員の指示が的外れになってしまうことも多くあります。

多くの場合、パートさんや派遣さんは社員を立てようとはしてくれますが、あまりその状態が続くと関係性が悪化していきます。店舗で見たときに、新しい社員は経験値が低く、パートさんや派遣さんの経験値が高くなります。本来であれば、社員への教育をしっかりすることが必要ですが、概要は研修で教えられても、店舗オペレーションは現場で覚えていくことが主力になります。ところが、少人数の社員で回すために、社員同士のシフトが重なる機会が少なく、軽く教えてあとは自力で頑張れ、自分もそうやってきたんだから、というような状態になってしまうことも多くあります。

また、店長さんは多くの場合、異動があることが基本で、短ければ数ヶ月、長くても1~2年で転勤してしまうことが多いようです。店長が替わった際に、会社として変わらない基本の部分がしっかりしていればいいのですが、実際には店長の特徴でお店の運営は大きく変わってしまいます。

店長を含む社員は、パートさんや派遣さんから常時観察される立場になってしまいます。たくさんの店長や社員を見て、こんどはどんな人だろう、いい人であって欲しいと期待を持って待つために、新しい人の振る舞いひとつで、意識が全く変わってしまうことになります。

これらの問題は、教えやすい運営面の教育とは違う、教えにくい対人スキルの学びが不足していることではないかと考えています。

カウンセリングで現場の多くの方と話していく中で、パートさんや派遣さんが感じる不満や困りごと、そういった中でわからないなりに頑張る若い店長や社員の苦しみなど、多くの課題が見えてきます。これは実は学びとマネジメントの課題に他なりません。

現場の声、起きている事実、リアルな内容は、上位管理者に伝わるほど一般化され、対策も教科書的なものになってしまいます。実際には、教科書的な内容を、現場に合わせて、店長や社員の特徴に合わせてどう調整していくのかということも大切になります。それは発達障害の問題とも大きな関連があり、現場の声を聞くからこそ伝えることができる大切な学びになります。カウンセリングをマネジメントの定点観測として活用するメリットがこんなところにも生まれてきます。

「働く人の立場の違いと必要な学び」への3件のフィードバック

  1. あくまでも私自身の、ごく限られた経験の話ですが。かなり以前に、講師の仕事をしていたことがあります。

    最初に始めた個別指導の塾では、教室長だけが社員で、講師は皆、アルバイト。各教室にいるのは、事務と講師の管理や保護者への対応に責任を持つ教室長と講師だけでした。講師としてアルバイトで採用されると、最初の2カ月ほどのうちに初期研修が義務づけられています。同じく採用間もない講師が、指定の会場で研修担当の教室長が取り仕切る二時間ほどの研修。教室長が、塾の理念等も語りますが、時間の多くがディスカッションにあてられました。この研修、講師の仕事にどのように取り組んでいくかを考える、非常にいい機会でした。同時に、周囲とこの仕事を続ける上で難しいと感じることなども打ち解けて話すことができ、よかったです。その後も、数年に1回程度でしたが、やはり講師のための本部主催の研修がありました。また、教室長は、エリアごとの教室長が集まっての研修が折々、あったそうです。

    その数年後、結婚を機に塾をやめてから始めた子供英語教室の仕事でも、月に1回、エリアの講師が集まってミーティングがありました。別の言い方をすると、普段は小さな教室で、事務関連から全てをこなしているような講師が集まって、本社からきたテーマがメインですが、ベテラン講師に経験談やアイデアをもらったりもしながら、打ち解けて話す機会です。やはり、同じスタイルで働く人との繋がりがもてて、とてもよかったように振り返ります。

    塾の研修も、英語教室のミーティングも、会社から、一応、時給が発生し、やや大げさに言えば、会社からケアしてもらう機会を与えられ、ごくたまにはであったのですが、なかなか有意義だったように感じます。

    同じ職場で、色々なスタイルで働く人がどうコミュニケーションを図るかについてではないのですが、まずは、同じスタイルで働く人同士のつながりを大事にする機会があって、それぞれのスタイルの人達が会社にそれなりにケアされていると感じられるのも大事かなと考えました。

    1. ジーンW様

      コメントありがとうございます。
      素敵な環境でお仕事をされていたのですね。多様な働き方、生き方が増えていく中で、同じようなスタイルで働く人同士の繋がり、それを会社が認めて支援する仕組み、多くの企業に費とがっていくといいなと私も思います。

      1. 返信のコメントをありがとうございます。

        率直なところ、なんということのないアルバイトでもあったのですが、支援とまでいかなくても、気にかけてもらっているというだけでも大きかったです。初めて臨んだ教える仕事で、かなり大げさな表現にもなりますが、自己研鑽していこうという気持ちをささやかながらも持ち合わせられ、そのあたり、本当にいい環境でお仕事させて頂きました。

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