カウンセラーというと、ひとりとしっかり向き合っていくことが多いのですが、企業に関わる機会が増えるほど、対象がひとりではなく、ひとりの集合体としての組織、という形になっていきます。ひとりの集合体である組織は、ひとりひとりとは異なる特徴を持ちますが、その特徴は、ひとりひとりの関係性の影響を受けています。
最近では、いくつかの会議体にカウンセラーとして踏み込んでいく機会も増えています。それは、場で何がおきているのか、という観察もそうなのですが、いったいどういった人間関係の中で業務が行われているのか、ということを知る機会にもなるわけです。
課長さん、部長さん、それぞれの会議体があり、それぞれその特徴があるわけです。例えば、課長さんの元気がない、と言っているとすれば、課長さんの意識や立ち位置に何かしらの改善点がある一方で、その課長さんを維持している部長さん、あるいは、その上位管理職の課題が見えてくることもあります。
多くの良心的な経営者の皆さんは、ひとりひとりを大切にしていきたい、そのうえで利益をしっかり出して、ひとりひとりの生活や人生を支えたいと真剣に思ってくださっています。しかし、その思いとは異なる現実がおきていくことも多くあります。
カウンセラーが会社の中に入っていく意味はそこにあります。それは、正論を言うことではなく、現場の皆さんの現状認識と、カウンセラーだからこそ気づくことができる現状認識から今の正しい現在地を示し、ひとりひとりがよい未来に向かって進むための戦略を一緒に作っていくことの、具体的な動きをしていく必要があるわけです。
特に会議の場では、職場の問題、という観点でひとりひとりが議論をしていきます。そのため、問題に対する向き合い方、あるいはその向き合い方がなぜ起きているのか、目指したかったのはどこなのか、実際に目指せるのはどこなのか、そういった全方向的な必要な情報が見えてくる場でもあります。ひとりひとり、そして組織に対してのアプローチを創造する材料として大切にしなくてはならない場なわけです。
カウンセリングというスキルは、対人だけではなく、対組織であっても有効なものだと考えています。魔法のような問題解決ではなく、現在地を知ることから始まる地道で丁寧なアプローチです。
実際に課長会に出席させていただくと、様々なポイントが見えてきます。部長さんたちと会話をすると、また異なるポイントが見えてきます。そこから組織を、ひとりひとりを力づけていくためには何をすべきか、具体的に考えることが大切です。
ひとりと組織、その両方に関わっていくことができること、それが企業に関わるカウンセラーの役割ですし、その両面にアプローチすることこそ、本質ではないかと考えています。