そこに居てくれる人の力


人が変化するとき、成長したりするときには、後になって、誰かが存在してくれた、ことに対する感謝の気持ちが生まれてくることがあります。

 

悩み、苦しんで、もがいているときには、不満や怒りの対象になっていたとしても、時間がたつにつれ、その存在が大切だったのだと思えるような形です。苦しみの渦中にいる際には、様々な刺激に対する感度が高まる一方で、処理する余力を失っていくような状況に追い込まれていきます。その時に、その場に存在し続けられる存在であるからこそ、のちに感謝の思いが強くなっていきます。実際には、渦中の際でも、感謝の気持ちは明確にあるのですが、それを覆い隠してし、吹き飛ばしてしまうほどの気持ちの波があるというのが実態とも言えます。

 

その存在する人、というのは一体どんな人なのか。特別な才能というわけではないのでしょうが、ふたつの力を発揮していると考えています。それは、相手を信頼すること、相手と本気で向き合うこと、このふたつです。信頼するということは、存在に対する信頼であり、今の状況と向き合いもがきながら生きていくことに対するもので、乗り越えて欲しいという期待はあれども、必ず乗り越えるという結果に対する信頼とは違うと思っています。もうひとつは、笑顔になれる日を信じながらも、その渦中で必死に過ごすその姿と本気で向き合っていく、ということです。

 

きっと乗り越えられる、いつかいい未来がくる、耳障りのいい言葉は、渦中の人にとってはなんの意味ことがほとんどです。一方で、みんな耐えているんだ、だれでも乗り越えていくんだ、という精神論の世界だけでもありません。それをわかりながら方法が見つからずに逃げられない渦中の人の状態を認め、今できること、未来の可能性、などを考えながらも、今の姿に真剣に向き合っていく覚悟とも言えます。

 

ふたつの力は、今を変えることではなく、いつかくる変化の可能性を信頼し、一緒に待ち続け、今と向き合う力と言えるかもしれません。

 

カウンセリングという現場は短い時間の非日常の世界でもあります。そこでのやりとりは、現実の中で考えていくことで、少しずつ、ご本人の力に変わっていきます。その変化を、一緒に居て見てくれる人がいるだけで、力強い足取りになることも多くあります。ですので、時には、パートナーの方、あるは身近な方、一緒に話をさせていただくことがあります。

 

未来の一歩のために、助けてくれる人、支えてくれる人は、一人でも多い方がいい。そんな考え方も実践もあると思うのです。

 

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