納得して仕事をする、ということは簡単ではありません。むしろ、これまでは、給料は我慢料と言われることがあったほど、理不尽で納得できないことが多いことが当然だった部分もあります。しかし、今の環境を考えた時に、我慢するのが当たり前、ということが正当化されるものでもありません。
現場で感じることは、納得できない状況は組織にとっての問題をより難しくする、ということです。まず、説明できない責任者が増え、権力を使うことのみが目立つようになっていることです。仕事の必要性、負荷の重さ、負担の継続、労働環境など、それぞれの状況含めて今と未来を説明できることはとても大切なことなのです。これは解決済みの理想形ではなく、現実と将来を織り交ぜて説明することが大切なのですが、実際には、仕事の必要性すら説明できないこともあるわけです。これにより、現場の納得感なく、結果だけを得ようとするマネジメントが作り出されていきます。
こうなると現場では指示されたことをやるわけですが、当然不満が蓄積します。不満をぶつけても「なるほど」あるいは「仕方ないかな」と思える説明が返ってこないわけですから、怒りはヒートアップすることになります。周囲を巻き込み、責任者-現場の対立関係にもなり得えます。本来は協力関係にあるはずが、敵対関係になってしまうと、回るものも回らなくなり、「いいからやれ」「言うことを聞けないのか」などの言葉が目立つ職場になっていきます。一度、こうなった関係はなかなか修復できず、結果的に責任者を入れ替えることになりますが、運を天に任せた対処療法でしかありませんし、異動先でまた同じ問題になる可能性もあるわけです。
また、こういった状況に巻き込まれた若手社員が辞めたくなってしまい、相談された家族が辞めることを簡単に勧めることが多いことも組織にとってはマイナスに働きます。3年は耐える、という言葉はすでにあり得ないものになっていると思えるほど、簡単に仕事を辞めることを推奨する一面も実際にあります。ご家族に経済力がある程度あるという事実からか、仕事をしなくてもいいようなニュアンスを伝え続けているケースも実際には存在するわけです。それの良し悪しではなく、そういう状況だ、ということを雇用側は知っておく必要があります。
手塩にかけて育てていても、当たり前のように納得いかない負荷を持たせ続ければ、いつかそれは限界に達します。将来を期待していても、本人の中に納得できる気持ちがない状況が続けば、それは結果的に人財を失って言うことに直結します。甘やかすことが大切だというわけではなく、説明できない状況を維持していることが問題ということです。組織は社会環境の影響を受けるので、多くの変化に対処していく必要があり、一時的に働く環境や負荷も変化します。その際に、不明瞭な部分を含め、どう現状と未来を説明するのか、それが納得をうむ要素になります。働く側が知りたいのは、負荷が嫌なのではなく、耐える価値があるかどうか、頑張る意味があるかどうか、ということなのです。
経験的に自分たちもそういう中でやってきた、という意識が強いと、なんでそこまで、という思いになることもあります。その思いを持つことは問題ありませんが、それでも、いい環境を作っていくために、いい結果にたどり着くためには、どう説明できるのか、という部分は、避けては通れないところだと思うのです。
働く理由は人それぞれ異なります。効果的に働いてもらうためには、その意味や意図を知ったうえで、最低限、働く意識を合わせてもらう必要があります。現場での対話を繰り返すほど、それを、説明をすること、伝えること、そのやり方を学ぶこと、は今の組織をより効果的にするための大切な方法になると感じます。実際に、説明できない責任者が増えてきている、ということを実感しています。