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教えてもらったことがない、を理解する


企業の場であっても、教育の場であっても、時間に限りがある以上、効率という観点は外すことはできないものかもしれません。具体的にどのような教え方をしているのかまでは確認することはできませんが、面接の現場で何度も聞くことがある、「教えてもらったことがない」という言葉は、重いもののように感じます。

私が会社員だったころ、その職場は、教えない教育という表現をしていました。もちろん、まったく教えないわけではないのですが、自分で考えて悩んで答えを出せ、という意識は不文律としてあったと思います。当時はインターネットなどありませんので、調べるというよりも考えて聞いて、本を教えてもらっての繰り返しでもありました。経験が増すにつれて、実は教えない教育なのではなく、教えられないのではないか、という見方に変わってきました。言い方を変えれば、教え方がわからない、ということが背景にあったのではないかと感じ始めたわけです。

実際に後輩が出来れば、自分の知っていることを伝える、ことはできるわけです。しかし、教えるとなる、相手が理解して自分のものにしてくれる必要がありますので、知っている知識を伝えることとは異なります。そうなると、相手にどう表現したら、あるいはどんなやり方をしたら伝わるのか、という様々な工夫が必要になります。そもそも、教える相手の考え方や知識レベル、経験の土壌がどうなっているのかをある程度把握する必要があります。しかし、効率、時間的な制限、などを理由に、その工夫の優先順位は必然的に下がっていきます。結果として、上手く伝われないと、教えてもダメ、理解していない、など一方的なレッテルを貼ってしまうことも多くあります。教えられた側からすれば、教えてもらっているのに、教えてもらっていないということにもなっていきます。教えてもらっているはずなのに理解できない自分が悪い、悪循環に入っていくことになります。

仕事の場合、結果をどう出していくか、あるいは、結果を出すためのやり方をどう考えていくか、が大切になります。だからこそ、その人の土壌を理解することから始める必要があるわけですが、教える側にも理解しなくてはいけない、という認識がなく、そのやり方を教えてもらった経験もないわけです。もちろん、これは仕事だけでなく、親子関係や夫婦関係、あるいは個々の特徴の差異についても、こういった考え方を持つことは、必要であると考えています。それぞれの人には特徴のバラツキがあるので、その理解を忘れてしまうと、教えること、伝えることが、まっすぐ相手に届かないことになります。

カウンセリングの現場では、当事者たちの話を聴きながらも、起きている現実を把握して、必要な環境調整にも関わっていきます。最終的には、それぞれがある程度のパフォーマンスを出せるようになることが望ましいですし、そのために教えることはとても大切なことです。教える側と教えられる側、それぞれに何を教えていくのか、企業や組織の中では、基礎になっていく大切な部分です。多くの組織の中で、管理者をふくめて教えてもらったことがなかった、と言う中で懸命に努力している現実があります。

企業や組織に関わる人が、少しでもその人に会った学び方で、良いパフォーマンスが出せるよう、様々な関わり方を続けていきます。

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